ADAS解説シリーズ|安全性能を正しく理解し、正しく修理するために。
フロントミリ波レーダ編
~“見えない電波”をどう制御しているのか?~
近年のADASでは「自動ブレーキ」・「ACC(アダプティブクルーズコントロール)」・「前方衝突警報」などにフロントミリ波レーダが使用されています。

■ミリ波レーダとは?
フロントミリ波レーダは
●TXアンテナ(送信側)から電波を照射し反射した電波をRXアンテナ(受信側)で受信しています。
●受信した反射波を解析し距離・方向・相対速度などを演算しています。
つまり「見ている」のではなく“反射を計算している”センサーです。

■周波数と波長の関係
現在の前方ミリ波レーダでは76GHz〜77GHz帯が使用されています。この周波数帯の波長は約4mmです。
つまり数mmレベルの変化でも電波反射条件に影響する可能性があります。
これが「ブラケット精度」・「ターゲット精度」・「取付環境」が極めて重要になる理由です。

■重要な要素① レーダ軸(水平・垂直)
ミリ波レーダには水平方向・垂直方向の基準軸があります。
この軸がズレると検知位置そのものがズレます。
例えば「正面の車両を斜め位置と認識」・「 路肩を障害物と判定」・「ガードレールへ誤反応」などが発生する可能性があります。
特に重要なのはブラケット状態です。
実際の板金修理ではグリル、コアサポート、レーダーブラケットなどが影響します。
ここで怖いのが外装は綺麗に直っているが、レーダブラケットが微妙にズレている。さらにブラケットの変形、はめ込み部の不良、固定ポイントノズレなどでもレーダー軸は変化します。
この場合エーミングが成立しない、異常値になる、完了表示しても性能が不安定となるケースがあります。
つまりミリ波レーダは“エーミング前の状態確認”が極めて重要なのです。

■重要な要素② 反射の種類
ミリ波レーダでは、三角リフレクタ、平面リフレクタなどが使用されます。
ここで重要なのが “反射方式の違い”です。
①三角リフレクタ
再帰性反射=入射方向へ電波を戻す特性を利用しています。
②平面リフレクタ
正対反射=正しく正対していないと正常反射しません。
そのため高さ・正対・センター位置・距離が極めて重要となります。
つまり “ターゲットを置く”ではなく、空間上の正しい位置へ存在させることが重要なのです。
そのため弊社では、3Dレーザー・デジタル角時計・センターサポートナビなどを使用し空間精度を管理しています。

■重要な要素③ ターゲット後方空間
ここは非常に重要ですが、あまり理解されていないポイントです。
ミリ波レーダはターゲット単体だけを見ているわけではありません。
つまり ターゲット後方環境(空間)も含めて 反射波を解析しています。
実際の作業環境では三角リフレクタ後方に壁、リフト、工具箱、他車両、金属棚などが存在している場合があります。
この場合でもエーミングは“完了表示”する場合があります。
しかし 整備要領書記載の空間条件を確保できていない環境では車両が認識する反射電波が変化します。
ターゲット以外からの反射波が増加し RXアンテナが受信する反射特性が変化します。
さらに重要なのがdBsm(レーダ反射断面積)です。
これは “どれだけ強く反射して見えるか”を表す指標です。
つまり周囲環境によってターゲットの見え方、反射強度、受信特性が変化します。
結果として レーダユニットが誤った反射環境を正常と演算してしまう可能性があります。
つまり “完了表示=正しい反射環境”ではないということです。

■重要な要素④ 床素材と反射環境
ミリ波は床面の影響も受けます。
特に 床内部の鉄筋配筋、床素材そのものは重要です。
コンクリートも電波反射します。
つまり周囲だけでなく足元の環境も成立条件なのです。
特にレーダ位置が低い車両、軽自動車、地面近接タイプでは床反射の影響を受けやすくなります。
弊社では ミリ波吸収パネルを使用し 不要反射を抑制しています。

■重要な要素⑤ レーダ前方の部品環境
最近の車両ではレーダがエンブレム裏に搭載されているケースが増加しています。
その為、エンブレム・グリル・前方部品環境も成立条件になります。
例えばエンブレムへのフィルム施工、社外品グリル交換、塗装状態変化、メッキ加工変化などによって電波反射環境が変化する場合があります。
つまり、レーダユニット単体だけではなくレーダ前方の“透過環境”も重要となります。
さらに車種によってはエンブレム中心と レーダ中心が一致しないケースもあります。
つまり “見た目中心”ではなく、レーダ本体中心を探す必要があるということです。
■最近の変化
近年は ワイドカメラ化、センサー統合、 クロスドメイン化、 SGW強化により作業時の OEM純正診断機依存度が急上昇しています。
特に 2023年以降の車両ではセキュリティ解除、、オンライン認証、作業サポート制限なども増加しています。

