前側方レーダ編

前側方レーダ編

ADAS解説シリーズ|安全性能を正しく理解し、正しく修理するために。

前側方レーダ編

〜“前を見ている”のではなく“斜め前の空間”を見ている〜

フロントミリ波レーダは前方。BSMは後側方。

前側方レーダ
■前側方レーダとは?

前側方レーダは車両の斜め前方、交差点で左右から近づく車両、前方へ流れ込む横方向の空間、を認識するセンサーです。
つまり“前”だけではなく、“斜め前から入ってくる空間”を見ています。ここがフロントミリ波レーダとも、BSMとも違うポイントです。

前側方レーダ
■より広角なレーダ

前側方レーダは他のレーダより広角タイプを使用しているケースが一般的です。
理由は単純で、交差点、側道、歩道側、車両斜め方向などを広範囲で検知する必要があるからです。
“遠くを真っ直ぐ見る”より “広く斜め方向を見る”ことを優先しています。

■一般的な取り付け位置

前側方レーダは主に、フロントバンパ側面内部、ヘッドライトユニット下部へ装着されているケースが一般的です。

バンパ補修との関係
■バンパ補修との関係

バンパ補修時は特に注意が必要です。
なぜならミリ波レーダはバンパを透過して電波照射しているためです。
つまり、パテ、塗装膜、金属粉、補修方法、変形状態などが 電波透過特性へ影響する可能性があります。
バンパー補修不可=交換としているケースがあります。
一方で補修可能範囲を細かく定めているメーカーもあります。

ヘッドライト脱着でもエーミング
■ヘッドライト脱着でもエーミング?

さらに最近増えているのがヘッドライトユニット下部装着タイプです。
このタイプではバンパ状態、ヘッドライト位置、ヘッドライトブラケット状態まで認識軸へ影響します。
そのためメーカーによってはヘッドライト脱着だけでもエーミング必要とされています。
つまりフェンダ修理のためにヘッドライトを外しただけでも前側方レーダエーミング対象になるケースがあるのです。

前側方レーダ
■前側方レーダの原理

基本原理はミリ波レーダと同じです。
ただし、前側方レーダでは検知したい方向が“正面”ではないため、センサーの向き・取付角度・周辺環境の影響が非常に大きくなります。

必要空間が従来より遥かに大きい
■重要な要素① 必要空間が従来より遥かに大きい

前側方レーダで最も重要なのは空間です。
BSMのエーミングでは、一般的にBSMユニット位置を起点とした側方空間が必要になります。
しかし前側方レーダではさらに後方までの空間が必要になるケースがあります。これは、前側方レーダが車両斜め前方へ広角照射しているためです。
車両横付近から、交差点方向まで広範囲を見ています。
そのため 前側方レーダエーミングは従来のエーミングよりさらに大きな空間が必要なのです。

反射環境の影響
■重要な要素② 反射環境の影響

前側方レーダもミリ波レーダです。
そのため、壁、柱、シャッター、金属棚、他の車両、リフトなどが反射要因となります。
特に前側方レーダは斜め方向を見るため “車両前方が空いている”だけでは不十分ということです。

■重要な要素③ “取り付けた位置”ではなく“向いている方向”

前側方レーダで特に重要なのは、どこに付いているかだけではなくどの方向を向いているかです。
数mmの取付ズレや、わずかな角度ズレでも「検知開始位置」「接近車両の認識タイミング」「横方向の検知範囲」に影響する可能性があります。

■特定整備との関係

一般的に特定整備というと「衝突被害軽減制動制御装置」「自動命令型操舵機能」が注目されます。
しかし前側方レーダが使用される「フロントクロストラフィック」などは結果として衝突被害軽減制動制御装置と連動している場合があります。
つまり前側方レーダが“制動制御へ影響を及ぼすおそれ”がある場合特定整備対象になる車両が存在します。
特定整備の定義では「センサー」「ECU」「センサー装着部位」の脱着・角度変更・機能調整でかじ取り装置又は制動装置へ影響するおそれがあるものは対象です。
つまり「前側方レーダだから対象外」ではなく“その機能が制御へ影響するか”が重要なのです。

■OEM(自動車メーカー)ごとの差

前側方レーダは、メーカーごとの差が非常に大きい領域です。
例えば「静的エーミング」「動的エーミング」「リフレクタ式」「走行学習方式」「 OEM純正診断機前提」などがあります。
つまり“前側方レーダ搭載車”というだけでは、作業方法は判断できません。

■SGWと輸入車問題

特に輸入車では前側方レーダがSGW配下にあるケースが多くなっています。
「汎用診断機ではアクセス不可」「診断すら出来ない」「作業サポートへ入れない」ケースがあります。
“診断機にメニューがある”ことと“実際に作業出来る”は別問題なのです。

■完了表示の落とし穴

前側方レーダでもエーミング完了表示が出る事と正しく認識していることは別問題です。
理由は「反射環境」「空間条件」「取付角度」「他センサーとの整合性」が結果に影響するためです。
つまり「“完了”ではなく」「“成立しているか”」を見る必要があります。

■作業の本質

前側方レーダのエーミングは「部品調整ではなく」「斜め前方の空間認識を成立させる作業」です。
重要なのは「 “正面を合わせる”ではなく」「斜め前の空間を正しく認識させること」です。